「診察になると、伝えたいことを忘れてしまった」「薬が切れてくる感じがするけれど、うまく説明できない」——パーキンソン病の症状を主治医に伝えることが難しいと感じている方へ。症状の記録と伝え方のポイントを、PDitオリジナル症状日誌PDF(無料)とともにお届けします。
「最近、なんとなく調子が悪い」「薬が切れてくる感じがするけれど、うまく説明できない」「先生に相談したいことがあったのに、診察になると忘れてしまった」——パーキンソン病のある方から、このようなお話を聞くことがあります。
パーキンソン病では、症状が一日中ずっと同じとは限りません。朝は身体が動きにくかったけれど、薬を飲んだら動きやすくなった。お昼前になると、また少し動きにくくなった。夕方になると、歩き出しにくさが気になる。
このような「1日の中での症状の変化」を、診察室で主治医にすべて伝えるのは意外と難しいものです。
そこで今回は、PDitオンラインセミナー「パーキンソン病の治療で大切なこと〜薬の調整と自分の症状の伝え方〜」でお伝えした内容をもとに、症状や薬の効き方を主治医に伝えるときのポイントをご紹介します。
記事の中では、実際に記録に使えるPDitオリジナル「症状日誌」PDFも無料でプレゼントします。
「先生、最近なんとなく調子が悪くて……」

診察室で「最近、調子はどうですか?」と聞かれたとき、皆さんはどのように答えているでしょうか。「まあまあです」「最近ちょっと悪いです」「なんとなく動きにくくなった気がします」——こうした答えになることも多いのではないでしょうか。
もちろん、「なんとなく調子が悪い」という感覚そのものも大切な情報です。ただ、「調子が悪い」の中身は、人によって大きく異なります。
- 手が震える
- 身体が動かしにくい
- 歩き出しにくい
- 足がすくむ
- 身体が重い
- 疲れやすい・眠気が強い
さらに、パーキンソン病では便秘や睡眠、気分の変化など、運動以外の症状がみられることもあります。
そのため、主治医に自分の状態を伝えるときには、「調子が悪い」から、もう一歩具体的にすることが大切になります。
主治医が診察室で見ているのは、生活の「一瞬」です
パーキンソン病の症状を伝えることが難しい理由の一つに、症状が変動することがあります。
- 「家を出るときは足が出にくかったのに、病院では普通に歩けた」
- 「朝は調子が良いけれど、夕方になると動きにくくなる」
- 「薬を飲んでしばらくすると動きやすくなるけれど、次の薬の前になると動きにくい」
つまり、診察室での状態 = 普段の生活での状態 とは限りません。
さらに、診察時間にも限りがあります。厚生労働省の「令和5年受療行動調査」では、病院の外来患者における診察時間は「5分以上10分未満」が40.9%と最も多いという結果でした。
限られた診察時間の中で、数週間の状態をすべて説明することは簡単ではありません。だからこそ重要なのは、たくさん話すことではなく、先生に伝えたい情報を整理しておくことです。

「薬を何錠飲んでいるか」だけでは分からないことがあります
パーキンソン病の治療では、レボドパをはじめ、症状や経過に応じてさまざまな薬が使用されます。そして経過とともに、レボドパの効果が次の服薬まで持続しにくくなるwearing-off(ウェアリングオフ)などがみられることがあります。
そのため、薬について主治医と相談するとき、「1日に何錠飲んでいるか」だけではなく、
- いつ飲んだのか
- 飲む前はどうだったのか
- 飲んだ後にどう変わったのか
という時間的な情報も大切になります。
7:00 薬を飲む → 8:00 動きやすくなる → 11:00 少し動きにくくなる → 12:00 薬を飲む → 13:00 再び動きやすくなる

このような情報があると、「最近薬が効かない気がします」と伝えるよりも、普段どのような変化を感じているのかを具体的に共有できます。
昨日の1日を正確に思い出せますか?
昨日の朝6時の身体の調子はどうだったでしょうか。10時は?14時は?18時は?さらに「その時間は何をしていましたか?」「歩きにくさはありましたか?」と聞かれると、かなり難しくなってきます。
ましてや診察で「この1か月、調子はどうでしたか?」と聞かれ、1か月間の変化を正確に思い出すのは簡単ではありません。
そこで活用したいのが、症状日誌です。
症状日誌で「1日の調子の波」を見えるようにする

症状日誌は、一日の身体の状態を時間軸に沿って記録するものです。PDitでは今回、できるだけ簡単に記録できるオリジナルの症状日誌を作成しました。
記録していただきたいのは、大きく4つです。
① 1日の身体の調子
「とても調子が良い」を10、「とても調子が悪い」を0として、その時間の状態に大まかに点をつけます。そして、点と点を線でつないでいきます。
重要なのは、「6点なのか7点なのか」を正確に決めることではありません。見ていただきたいのは、1日の"波"です。いつ調子が良くなったのか。いつ悪くなったのか。まずは大まかな変化を見てみましょう。
② 薬を飲んだ時間
身体の調子と服薬時間を同じ時間軸で見ることで、「薬を飲んだ後はどうだった?」「次の薬を飲む前はどうだった?」と振り返りやすくなります。
③ その時間にしていたこと
仕事、家事、買い物、散歩、食事、入浴など、その時間にしていた主な活動も記録してみましょう。「夕方になると調子が悪い」という情報だけでなく、「夕食の準備をしているときに歩き出しにくくなる」と分かれば、症状が生活にどのような影響を与えているのかも見えてきます。
④ 困ったこと・症状
「足が出にくかった」「身体が重かった」「眠気が強かった」「疲れて休憩した」など、普段使っている言葉で構いません。医学的に正しい症状名を書く必要はありません。「自分がどう感じたか」を記録してみてください。
症状日誌を書くと、どんなメリットがある?
症状日誌は、単に毎日の体調を記録するためだけのものではありません。特に大切なのは次の3つです。
① 自分の「調子の波」に気づく
記録を見返して初めて、「毎日夕方になると動きにくくなっている」「午前中は比較的動きやすい」など、自分でも気づいていなかったパターンが見えてくることがあります。
② 服薬と症状の時間的な関係を振り返る
服薬時間と身体の状態を一緒に記録することで、薬を飲む前後で自分がどのように感じていたのかを振り返る材料になります。
③ 診察で自分の状態を伝えやすくする
パーキンソン病のOFFについての調査では、症状が変動することや言葉で説明することの難しさがコミュニケーション上の課題として報告されています。同じ調査では、症状日誌について24%が「使用したことがあり、役立った」と回答し、61%が「使えば役立つと思う」と回答していました。
症状日誌は、すべてを正確に測定するための検査ではありません。自分の変化に気づき、その情報を主治医と共有するためのツールと考えていただくとよいと思います。
【無料PDF】PDitオリジナル「症状日誌」をプレゼント
今回の記事を読んでくださった方に、PDitオリジナル「症状日誌」PDFを無料でプレゼントします。この症状日誌では、
- 1日の身体の調子
- 服薬時間・薬剤名・量
- その時間の主な活動
- 困ったこと・症状
- 主治医に相談したいこと
を1枚にまとめて記録できます。
「毎日続けないと意味がない」と考える必要はありません。まずおすすめしたいのは、次回の診察前の3日間だけ記録してみることです。日誌を見せながら話すことで、すべてを頭の中で思い出して説明する必要がなくなります。
※この症状日誌は、診断や服薬調整をご自身で行うためのものではありません。薬の変更・中止・服用時間の変更は自己判断で行わず、必ず主治医・医療者へご相談ください。
診察前にもう一つ。「困っていることベスト3」を決めてみる

症状日誌と一緒に、もう一つ試していただきたいことがあります。診察前に「今日、これだけは先生に相談したい」ということを3つ決めておくことです。
ポイントは、必ずしも症状が強い順にしなくてよいということです。
- 「夕方の歩き出しにくさで、夕食の準備に困る」
- 「昼間の眠気で、仕事や家事が続けにくい」
- 「夜になると疲れて、入浴が大変」
「今の生活で何に困っているか」という視点で考えてみてください。
「なんとなく調子が悪い」から「いつ・何に困っているか」へ
症状日誌があると、診察での伝え方も少し変わります。
「先生、最近なんとなく調子が悪いんです」という伝え方から、「夕方になると歩き出しにくくなります。特に夕食の準備を始める頃に困っています。薬を飲んだ後は、また動きやすくなる感じがあります」という伝え方になるかもしれません。
大切なのは、上手に医学用語を使うことではありません。いつ起きるのか。どんな時に起きるのか。そのために何に困っているのか。ご自身が経験していることを、具体的に伝えることが大切です。
先生は「治療」の専門家。あなたは「自分の生活・症状」の専門家。

主治医は、診察や検査、薬の選択・調整などを行う治療の専門家です。一方で、朝起きたときの身体の状態、自宅で何に困っているのか、薬を飲んだ後にどう感じるのか——こうした日々の情報を最も多く持っているのは、ご本人やご家族です。
気づく → 記録する → 整理する → 伝える → 一緒に考える
先生にすべてを「お任せする」のではなく、自分の状態を知って伝えることも、治療に参加する方法の一つです。
次の診察から、できることを一つ。
今回の記事を読んだからといって、明日から毎日細かく記録する必要はありません。まずは、
- 「診察前の3日間だけ、症状日誌を書いてみる」
- 「先生に相談したいことを3つ書いてみる」
それだけでも構いません。今回の症状日誌が、ご自身の状態を振り返り、主治医の先生と一緒により良い治療や生活について考えるきっかけになれば幸いです。
参考文献
- 厚生労働省.令和5年受療行動調査(概数)の概況.
- Armstrong MJ, et al. Communication About OFF Periods in Parkinson's Disease: A Survey of Physicians, Patients, and Carepartners. Front Neurol. 2019;10:989.
