日常生活

パーキンソン病と仕事の両立|誰に相談し、何を伝えればよい?

主治医・職場・産業医の役割と、両立支援カードの使い方

パーキンソン病と仕事の両立|誰に相談し、何を伝えればよい?

診断だけで働き方を決めず、困る作業と希望を整理するところから。主治医・職場・支援機関と、自分に合う選択肢を考えましょう。

「診断されたけれど、今の仕事は続けられるのだろうか」 「職場にどこまで話せばよいか、迷っている」

パーキンソン病と診断されたという理由だけで、すぐに退職を決める必要はありません。まずは、困っている作業と続けたいことを整理し、主治医・職場・支援機関へ相談するところから始めましょう。 働き方を調整することも、休んで治療を優先することも、状態と希望に合わせて考える選択肢です。[1]

この記事では、相談先の役割、診察で伝えるメモ、「治療と仕事の両立支援カード」の使い方を紹介します。

編集:小川順也/原記事:作業療法士・属崇維

1. 仕事の相談は「どの作業で困るか」から

同じ病名でも、必要な配慮は仕事内容や体調によって変わります。「働ける・働けない」の二択にする前に、仕事のどの場面が負担になっているかを具体的にしてみましょう。

例えば、入力や書字に時間がかかる、立ち仕事の途中で休みたくなる、混雑した通勤がつらい、通院時間を確保しにくい、といったことです。これらは相談内容の例であり、すべての方に当てはまる症状ではありません。

診察では、調子のよい時間だけでなく、困りやすい時間帯や頻度も伝えます。薬の効き方や眠気などが仕事に影響していると感じたら、自己判断で服薬を変えずに主治医へ相談してください。

「まだ仕事はできているけれど、以前より負担が大きい」という段階でも、相談して構いません。相談を始めることは、その場で退職や休職を決めることではありません。

2. 誰に相談する?主治医と産業医、職場の役割

主治医は病気・治療の状態を踏まえて医学的な意見を伝え、産業医などの産業保健スタッフは仕事内容や職場環境も踏まえて助言します。勤務の調整は、本人の希望を聞き、医学的な意見を参考に、事業主が検討・決定します。[1]

相談先 相談したいこと・主な役割
主治医 症状や治療が仕事に及ぼす影響、避けた方がよい作業、通院や休憩などの医学的な配慮
産業医・保健師など 健康状態と実際の業務をつなげ、勤務時間・作業内容・安全への配慮を職場へ助言
上司・人事労務担当 社内の相談窓口、勤務や休暇の制度、具体的な調整の可否と手続き
医療機関の相談窓口 医療ソーシャルワーカーなどへ、仕事・生活・制度の困りごとや外部機関へのつなぎを相談
産業保健総合支援センター 治療と仕事の両立についての相談や、医療と職場をつなぐ支援の利用方法を確認

産業医がいない職場でも、相談をあきらめる必要はありません。まず主治医や医療機関の相談窓口に話し、勤務先の担当者と、外部の支援を使えるか確認します。[1]

例えば、東京産業保健総合支援センターの両立支援サービスでは、電話・メール・面談などによる相談と、本人の同意を前提にした個別調整支援が案内されています。面談は予約が必要です。東京以外の方は、お住まいや勤務先の地域の産業保健総合支援センターへ、対象や申込方法を確認してください。[3]

3. 主治医に伝えるメモは「仕事・困る場面・希望」

診察だけでは、医師が普段の仕事内容を十分に把握できないことがあります。職業名に加えて、実際の作業を伝えることが、具体的な助言につながります。[2]

次の表は、相談用のメモの例です。書けるところから始め、分からない社内制度を無理に埋める必要はありません。

メモする項目 記入例・確かめること
普段の仕事 「事務職。入力と電話対応が中心」「売場で立って接客し、荷物を運ぶ」など
勤務と通勤 始業・終業、休憩、残業や夜勤、通勤時間と移動方法
困る場面 いつ、何をすると、どのくらい困るか。できている作業も書く
治療との関係 通院予定、服薬の時間、体調の変動と仕事が重なる場面
続けたいこと 担当したい仕事や、大切にしたい働き方
相談したい調整 休憩・通院時間・作業の分担など。利用できる社内制度は担当者に確認

例えば「午後の入力作業で手が動かしにくく、予定より時間がかかる。入力の順番や分担を相談したい」と伝えると、困りごとと希望が一緒に伝わります。これは架空の記入例で、特定の調整が医学的に適しているという意味ではありません。

運転、機械の操作、高所での作業など、安全に直結する仕事がある場合は、その内容も省かず伝えてください。本人と周囲の安全を含め、医師・職場と具体的に検討します。[1,2]

4. 「治療と仕事の両立支援カード」は何に使う?

厚生労働省が紹介するこのカードは、本人が勤務情報を主治医へ伝え、主治医が就業上の配慮などについて意見を書くための様式例です。本人の記載欄と医師の記載欄を使い、職場との話し合いへつなげます。[2]

カードを書くだけで勤務条件が自動的に決まるわけではありません。 会社で指定する様式があるか、書類の提出先はどこかを確認し、主治医の意見をもとに相談します。医療機関での書類作成の費用や所要日数も、依頼前に確認しましょう。

仕事と治療の相談を進める4つの段階。相談窓口と共有範囲の確認、仕事と困りごとの整理、主治医の意見、職場との調整と見直し。本人の希望と同意を中心に考える図解

相談の入口で迷う場合は、医療機関の相談窓口に、カードの書き方を含めて相談できます。正式な手続きは勤務先のルールを確認し、本人から支援を求める申出を行うことが基本です。[1,2]

厚生労働省「治療と仕事の両立支援カード編」の説明を見る(PDF)

5. 職場にどこまで伝える?共有の範囲も相談する

病気のことを伝えるか迷うとき、いきなり同僚全員へ説明する必要はありません。まず相談窓口で、「誰が情報を扱うのか」「何のために必要なのか」「どの範囲へ共有するのか」を確認しましょう。[1,2]

配慮を考えるために必要な情報と、周囲へ広く知らせる情報は同じではありません。一方、安全や勤務の調整に必要な情報まで伝わらないと、具体的な支援を検討しにくい場合があります。伝えたくない内容があるときは、そのことも医療機関や支援担当者へ相談してください。[2]

2026年4月1日から、職場における治療と就業の両立支援の取組は、事業主の努力義務になりました。ただし、希望した勤務形態が必ず認められることや、個々の雇用が保証されることを意味するものではありません。利用できる制度や条件は勤務先に確認します。[6]

時差出勤、短時間勤務、在宅勤務、通院のための休暇などは、話し合う選択肢です。仕事内容・体調・職場の制度に合わせて検討し、実施したら負担の変化を確かめます。[1]

6. 研究から考える:本人の頑張りだけに任せない

欧州で、診断時に働いていたパーキンソン病の方560人を対象とした横断調査では、仕事を失った人は就労中の人より、疲労や睡眠などの自己評価が悪い傾向にありました。職場環境の調整や柔軟な働き方も、支援の候補として挙げられています。[4]

ただし、これは一時点の自己申告調査です。疲労が離職を引き起こしたことや、特定の調整で長く働けることを証明した研究ではありません。海外の結果を、そのまま日本での制度や個人の見通しに当てはめることもできません。

別の米国の研究では、当事者16人と専門職10人への討議から、相談先の情報、医療側から仕事について話す機会、本人に合わせた柔軟な支援が必要と整理されました。こちらも少人数の経験を扱った研究で、支援の効果を比較した試験ではありません。[5]

これらの研究を踏まえると、仕事の相談では、動作だけでなく疲れや睡眠、業務の負担、職場の環境を一緒に確認する視点が大切だと考えられます。仕事を続けにくくなったことを、本人の努力や気持ちの問題にしないことも大切です。

7. 今日できる一歩と、PDitで相談できること

今日すべてを決める必要はありません。「困っている作業を一つ書く」「次の診察で仕事の話をする」「社内の相談窓口を確認する」のどれか一つから始めてみてください。

手先の動作についてはボタン・箸・スマホ操作の工夫とリハビリ、運動の始め方は診断早期に運動を始める理由と、自分に合う始め方も参考になります。

「通勤のために歩きやすくなりたい」「仕事で使う手の動きを相談したい」など、生活や仕事につながる運動の相談には、PDitのスタジオ・オンライントレーニングをご覧ください。

PDitのスタジオ・オンラインでの運動支援を見る

就業の可否や勤務条件は、主治医・産業医などの意見と本人の希望をもとに、職場で検討する事項です。運動支援だけで仕事の継続を保証するものではありません。医療・職場・生活を支える人をつなぎ、自分に合う選択肢を少しずつ増やしていきましょう。

参考文献・公式資料

  1. 厚生労働省.治療と就業の両立支援指針.令和8年厚生労働省告示第28号、2026年4月1日適用。
  2. 厚生労働省.企業・医療機関連携マニュアル「治療と仕事の両立支援カード編」.カードの構成・使い方・情報共有の注意点。
  3. 東京産業保健総合支援センター.治療と仕事の両立支援サービス.相談方法・個別調整支援の案内。
  4. Collett J, et al. Lost employment potential and supporting people with Parkinson’s to stay in work: insights from a Pan European cross-sectional survey. Disability and Rehabilitation. 2023;45:832–839. 論文情報・抄録
  5. Rafferty M, et al. Employment Resources for People with Parkinson’s Disease: A Resource Review and Needs Assessment. Journal of Occupational Rehabilitation. 2021;31:275–284. 論文情報・DOI
  6. 厚生労働省.治療と就業の両立支援指針(概要).2026年4月からの努力義務と支援の流れ。

旧PDitブログ「パーキンソン病と仕事。誰に相談したらいい?」(原記事:作業療法士・属崇維)をもとに、公式資料と研究を確認して再構成しました。制度・相談先の情報確認:2026年10月12日。

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小川 順也
この記事の執筆者
小川 順也
株式会社Smile Space 代表取締役 / 理学療法士 / LSVT BIG 認定資格者
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