姿勢・歩行

パーキンソン病で歩幅が小さくなったら|リズムと目印を使う歩行練習の考え方

歩幅・テンポ・速度を分けて、自分に合う練習を相談しよう

パーキンソン病で歩幅が小さくなったら|リズムと目印を使う歩行練習の考え方

歩幅が小さいとき、足を速く出すことだけを目標にしないでください。歩幅・テンポ・速度の違いと、音や目印を使う練習の研究を整理し、自分に合う方法を相談するためのヒントを紹介します。

こんにちは。PDit(ピディット)の小川順也です。

「以前より歩幅が小さくなった」「足を忙しく動かしているのに、なかなか前へ進まない」。パーキンソン病と診断され、歩き方の変化が気になっている方もいると思います。

歩行練習では、歩幅・足を出すテンポ・歩く速度を分けて考えることが役立ちます。音や目印が助けになる場合もありますが、全員が同じ速さや大きな歩幅を目指すわけではありません。

この記事では、歩き続けるときの「一歩が小さい」という困りごとを中心に、研究から分かることと、自分に合う練習を相談するためのポイントを紹介します。

1. 歩幅・テンポ・速度は、それぞれ違います

歩幅は、一歩で前へ進む距離です。テンポ(歩行率)は、一定時間に何歩出すか。歩行速度は、一定時間にどれだけ前へ進むかを表します。

同じテンポでも、一歩が小さければ進む距離は短くなります。反対に、足を出す回数だけ増えても、歩幅がさらに小さくなれば、歩きやすくなるとは限りません。

パーキンソン病では、小刻みな歩き方や、細かな足取りで前へ急いでしまう「突進歩行」がみられることがあります。「遅いから、もっと速い音に合わせよう」と考える前に、一歩の大きさと、止まれる安定性も一緒に確かめることが大切です。[1]

歩幅は一歩の距離、テンポは一定時間の歩数、速度は一定時間に進む距離。足を速く出すことだけを目標にせず、安定して歩ける組み合わせを相談するための概念図。

図は用語を整理するためのオリジナル概念図です。個人の目標値や運動の処方を示すものではありません。

なお、歩こうとしているのに一時的に足が出なくなる「すくみ足」は、歩幅が小さいことと同じではありません。両方が重なることもあります。歩き始めや方向転換で止まることが主な悩みなら、すくみ足と外部キューについての記事も参考にしてください。

2. 小さな歩幅を「筋力不足」だけで説明しない

パーキンソン病では、動きの小ささや遅さ、身体のこわばり、自動的に動くことの難しさなどが歩行に関わります。自分では十分に足を出しているつもりでも、実際の動きとの違いを感じにくい場合もあります。[1]

ただし、それを「本人が気づかないことが悪い」と捉える必要はありません。痛みやバランス、疲れやすさ、歩く場所なども含めて、歩きにくさの条件を整理しましょう。

薬と運動は、組み合わせて考えます。 動作の遅さには薬物療法が役立ちます。薬の効き方によって動きやすさが変わる場合もあるため、「運動すれば薬の相談は不要」「動作緩慢には薬が効かない」とは考えません。服薬後の時間と歩きにくさの関係を主治医に伝え、薬は自己判断で変更しないでください。[2]

3. 研究から分かる、音や目印を使う練習の可能性

音のリズムや床の目印など、動くための手掛かりを「キュー」と呼びます。米国理学療法士協会(APTA)のガイドラインでは、パーキンソン病の歩行を支える方法として、理学療法士による外部キューの活用を強く推奨しています。ただし、最適な種類や練習量は一律に決められていません。[5]

自宅での練習を調べたRESCUE試験

Nieuwboerらは、歩行に問題のあるパーキンソン病の方153名を対象に、理学療法士が自宅を訪問する3週間の練習を検討しました。音などの種類やテンポを本人に合わせて調整する方法です。[3]

練習後には、統計的な調整を行った推定値で、一歩の長さが約4cm、歩行速度が約0.05m/秒改善しました。一方、歩数のテンポには有意な変化がありませんでした。歩きやすさを考えるときに、テンポだけを速める必要があるわけではないことを示す結果です。[3]

ただし、改善は小さく、練習終了後6週間では多くの効果が減少しました。転倒を減らす効果も、この試験では確認されていません。重い認知機能の低下などがある方は除外されており、全員に同じ結果を当てはめることはできません。[3]

音を鳴らすだけで十分とは限りません

Bakerらは、パーキンソン病の方15名と健康な方12名を対象に、音に合わせる方法、歩幅に注意を向ける方法、両方を組み合わせる方法を比較しました。パーキンソン病の方では、歩幅に注意を向ける方法と組み合わせた方法で歩行速度や歩幅が改善しましたが、音だけの条件では明確な改善がありませんでした。[4]

これは少人数の、その場の変化を調べた研究です。「音は無効」「意識すれば必ず歩ける」という意味ではありません。何を手掛かりにすると、どの動きが変わるかを確かめる必要があると読めます。[4]

これらは歩行機能を調べた研究であり、パーキンソン病の進行を止めることや、PDit独自のメニューの効果を証明した研究ではありません。

4. リズム・目印・声掛けをどう選ぶ?

次の表は、専門職と相談するときの整理です。すべてを同時に加えるためのメニューではありません。[1,3–5]

手掛かり 使い方の例と、確かめたいこと
音のリズム メトロノームなどで足を出すタイミングを示します。音についていこうとして歩幅が縮んだり、前のめりになったりしないかを確認します。
見える目印 床の線などを、一歩の位置や大きさの目安にします。本人が無理なく届く間隔か、下を見続けて周囲への注意が減らないかを確認します。
短い言葉・注意の向け方 「一歩を少し大きく」など、分かりやすい一つの手掛かりを使います。力みや不安、ふらつきが増えるなら、伝え方や課題を見直します。

テンポを調整する際は、普段の歩き方が出発点になります。RESCUE試験でも本人の歩行リズムをもとに設定し、すくみがある方では、足が急ぎすぎないようテンポを下げる調整も行われました。[3]

「140bpmまで上げる」「10mを必ず12歩で歩く」といった共通の到達目標は設けません。身長や症状だけでなく、痛み、転倒リスク、生活で必要な動作によって、適切な目標は変わります。

5. 今日できることは、歩きにくい場面を一つ書くこと

まずは歩数の記録を競うよりも、次の三つを短くメモしてみてください。相談時に、課題を絞りやすくなります。

新しい手掛かりを試すときは、主治医や理学療法士に相談して、安全な平らな場所と見守りの必要性を確認しましょう。最初から音楽・会話・荷物運びを重ねず、歩くことに集中しやすい条件を整えます。[1,5]

特に、転びそうになる、足が急いで止まりにくい、すくみがある方は、一人で速度を上げる練習を始めず相談してください。練習中に痛みやめまい、強いふらつきが出たら中止し、安全な場所で休みます。

練習の振り返りでは、「速くなったか」だけでなく、無理なく止まれるか、方向を変えられるか、行きたい場所へ安心して移動できるかも大切にしましょう。

6. PDitで、自分に合う歩行練習を考える

旧記事では「PDメリハリウォーキング」という呼び方で、歩幅とテンポに目を向ける練習を紹介しました。これは現場で用いていた呼称です。研究で検証されたキューイングの方法と、同一の治療プログラムではありません。

大切にしたいのは、「大きく・速く」を一律に求めることではなく、いまの歩き方を知り、自分の生活につながる練習を選ぶことです。必要に応じて、歩行だけでなく筋力・バランス・身体の動かしやすさも合わせて考えます。

「歩幅が小さくなった気がするけれど、何から始めればよいか分からない」という段階から相談して構いません。PDitでは、スタジオやオンラインでの運動支援を案内しています。オンラインで安全に行える内容かどうかも含め、自分に合う方法をご相談ください。

PDitのスタジオ・オンライントレーニングと相談案内を見る

運動を始める時期や全体像については、診断早期に運動を始める理由と、自分に合う始め方をご覧ください。

参考文献

  1. Parkinson's Foundation. Trouble Moving or Walking. 参照日:2026年10月1日。
  2. Parkinson's Foundation. Bradykinesia (Slowness of Movement). 参照日:2026年10月1日。
  3. Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson's disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78:134–140.
  4. Baker K, Rochester L, Nieuwboer A. The immediate effect of attentional, auditory, and a combined cue strategy on gait during single and dual tasks in Parkinson's disease. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88:1593–1600. doi:10.1016/j.apmr.2007.07.026.
  5. Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022;102:pzab302.
この記事をシェアする
小川 順也
この記事の執筆者
小川 順也
株式会社Smile Space 代表取締役 / 理学療法士 / LSVT BIG 認定資格者
プロフィール詳細 →
無料メールマガジン

日常生活や運動に役立つ
情報をお届けします

パーキンソン病の最新情報・運動のヒントを無料でお届けします

※ いつでも解除できます。個人情報は適切に管理します。

今の悩みを、専門職に相談してみませんか? 公式LINEでお悩みを相談する