痛みをすべてパーキンソン病のせいにしたり、我慢して運動を続けたりする必要はありません。痛みの出方と生活への影響を整理し、医療者に相談するためのポイントをまとめます。
「腰や肩が痛いのも、パーキンソン病だからでしょうか?」 「痛いときも、頑張って運動した方がよいのでしょうか?」
痛みがあると、運動だけでなく、着替えや外出もおっくうになることがあります。
まず大切なのは、痛みをすべてパーキンソン病のせいにせず、どこが・いつ・どのように痛むのかを整理することです。 原因を確かめながら、治療と自分に合う運動・生活の工夫を組み合わせて考えます。[1,2]
この記事では、痛みの見方、研究から分かること、相談用のメモ、受診を急ぐサインを紹介します。
編集:小川順也
1. 腰・肩・脚の痛みは、原因が一つとは限らない
パーキンソン病では、身体のこわばりや動かしにくさと痛みが関係することがあります。一方で、関節や腱の問題、神経の圧迫など、別の原因が重なっている場合もあります。[1,2]
同じ「肩が痛い」でも、腕を上げたときに痛むのか、じっとしていても痛いのかで、確認すべき点は変わります。足の指が強く丸まって痛む、しびれや電気が走るような感じがある、といった出方も、診察で伝えたい情報です。
痛む場所や感じ方だけで、自分で原因を決める必要はありません。 複数の原因が重なることもあり、医療者が経過や診察所見と合わせて判断します。[1–3]
Myliusらは、パーキンソン病の方159人と健常者37人を対象に、痛みを整理する分類法を検討しました。病気との関連や痛みの仕組みを区別する研究で、パーキンソン病に直接関連しない痛みも扱っています。[3]
ただし、これは治療の効果を比べた研究ではありません。診断されて間もない方が、その分類だけで自分の病因や治療法を選べるわけでもありません。記事で伝えたいのは、「同じ病名なら痛みの原因も同じ」と考えないことです。
身体のこわばりが気になる方は、筋固縮と運動・リハビリの考え方もご覧ください。
2. 「左右差があるから痛い」と決めつけない
旧PDitブログでは、痛みのある方の動作や筋力を確認し、左右差に気づいた臨床経験を紹介しました。身体の使い方を見直す視点は大切ですが、一つの経験だけで痛みの原因を確定することはできません。
例えば、運動を始めた後に痛みが出ても、「その機器が原因」「反対側の脚が弱いから」とは、その経過だけでは言い切れません。運動の量、動かし方、関節の状態、生活での負担などを合わせて確かめます。
ストレッチの後に一時的に楽になった場合も、その反応だけで原因が分かったことにはなりません。左右差は確認する項目の一つであって、すべての痛みを説明する答えではないと考えましょう。
3. 痛みがあっても運動してよい? 研究の読み方
痛みへの対応には、原因に合った運動や理学療法が選択肢になる場合があります。ただし、痛みを我慢して強い運動をすればよい、という意味ではありません。[1,2]
研究の一例として、Pérez de la Cruzは、パーキンソン病の方30人を、水中でゆっくり動くAi Chi(アイチ)と陸上での理学療法の2群に分けて比較しました。10週間の介入で痛みの評価に改善が報告されています。[4]
この研究は、薬をやめて運動だけを試したものではありません。特定の条件で実施した小規模な研究であり、あらゆる痛みや自宅での運動に同じ結果が得られるとは言えません。
| 研究から考えられること | その研究だけでは言えないこと |
|---|---|
| 状態に合わせた運動を、痛みへのケアの一部として検討する余地がある | 運動が薬より優れている、薬を減らしてよい |
| 運動の方法や環境によって、反応が異なる可能性がある | 水中運動や同じメニューが、全員に最適である |
| 痛みの評価と生活への影響を確かめながら支援を考える | PDit独自のメニューの効果や、長期的な改善が保証される |
痛みの感じ方には、運動内容以外の要素も関わります。「効いたか、効かなかったか」だけでなく、どんな条件で、どのくらい続き、生活の何が変わったかを見ることが大切です。
運動で痛みが強くなる場合は、その動作を中止して相談してください。急に強くなった痛みや普段と違う症状がある場合は、運動方法を探す前に医療機関へ相談します。[5]
4. 診察で伝える「痛みのメモ」を作ろう
「腰が痛い」という一言に、少し情報を加えるだけでも相談の手がかりになります。難しい医学用語を使わず、本人の言葉で構いません。[1,2]

図:文献[1,2]をもとにPDitが作成。痛みの原因を自己診断する図ではなく、相談を助ける整理図です。
| メモすること | 伝え方の例 |
|---|---|
| どこが・どちら側が痛むか | 腰全体ではなく、右のお尻の辺り |
| どんな痛みか・何をすると痛むか | 立ち上がるとズキッとする/しびれもある |
| いつ始まり・どのくらい続くか | 昨日から/朝に目立つ/数分続く |
| 服薬や動きやすさとの時間関係 | 薬を飲む前後で違いを感じるか |
| 生活で何に困るか | 靴下を履きにくい/夜に目が覚める |
上の例は架空の記入例です。すべての欄を埋める必要はありません。最初は「一番困る場面」を一つ書くところから始めてみてください。
服薬と痛みの時間関係が気になっても、薬の量や間隔を自己判断で変えず、記録を主治医に見せて相談しましょう。写真や動画を使う場合も、無理に痛い動作を再現する必要はありません。
5. どこに相談する? 受診を急ぐ目安も知っておく
痛みが続く、眠りや外出に支障がある、以前より強くなるときは、我慢を続けず主治医に伝えてください。パーキンソン病を診ている医師に相談し、必要に応じて整形外科や痛みを専門とする診療、理学療法・作業療法などへつないでもらいます。[1,2]
次の診察まで待たず、早めに相談したい変化
- 急に強くなった、または急速に悪化する腰・背中の痛み。
- 痛みに発熱や強いだるさなど、全身の不調が伴う。
- 痛みで日常生活が大きく妨げられ、いつもの対処では落ち着かない。
とくに腰・背中の痛みに、新たな両脚のしびれ・力の入りにくさ、股の周囲の感覚低下、尿が出にくい・漏れるなどの排尿や排便の異常が伴う場合は、速やかな救急の評価が必要です。もともとの頻尿だけを指すのではなく、痛みとともに新しく現れた変化に注意します。[5]
突然の激しい胸・背中の痛み、急な息苦しさ、突然片側の手足に力が入らないときは、119番へ。 「いつものパーキンソン病の症状」と思い込まないでください。[6]
6. 運動を続けるには「方法と量」を相談する
医療者と原因や注意点を確認できたら、目標を「痛みに耐えて運動すること」ではなく、「買い物に行きたい」「着替えを楽にしたい」など、大切な生活の動作に置いてみましょう。
運動の相談では、現在のメニュー、回数、行う時間帯と、運動中・運動後の痛みの変化を伝えると調整しやすくなります。休憩の取り方、動かす範囲、姿勢なども含めて検討します。一律の回数や負荷をそのまま当てはめる必要はありません。[1,2]
「痛いからすべてをあきらめる」と「痛くても我慢して続ける」の間にも、方法を変える選択肢があります。適した動作や運動量を、主治医や担当する専門職と一緒に探していきましょう。
運動の始め方全体は、診断早期からの運動・リハビリと、自分に合う始め方で紹介しています。
7. PDitで、生活に合う運動の進め方を相談する
「痛みが気になって運動を始められない」「今の運動が自分に合っているか分からない」という場合は、医療機関で確認した注意点と、生活で困っている動作を整理してみてください。
PDitのスタジオ・オンライントレーニングは、医療機関での治療・リハビリとあわせて、生活の中で運動を続ける方法を考える際の選択肢です。サービスの内容は、新しい案内サイトをご覧ください。
痛みの原因が分からないまま、運動の負荷を上げる必要はありません。まず一つ、困っている場面を言葉にすることから始めていきましょう。
この記事は一般的な情報提供です。痛みの原因、治療、運動の適否は、主治医・担当する専門職に確認してください。
参考文献
- Parkinson’s Foundation. Pain in Parkinson’s Disease. 痛みの背景、治療・理学療法、相談用の記録。
- Parkinson’s UK. Pain. 痛みの種類、医療者への相談と個別の対応。
- Mylius V, et al. The Parkinson disease pain classification system: results from an international mechanism-based classification approach. Pain. 2021;162(4):1201–1210. DOI: 10.1097/j.pain.0000000000002107.
- Pérez de la Cruz S. Effectiveness of aquatic therapy for the control of pain and increased functionality in people with Parkinson’s disease: a randomized clinical trial. Eur J Phys Rehabil Med. 2017;53(6):825–832. DOI: 10.23736/S1973-9087.17.04647-0.
- NHS. Back pain. 腰背部痛の相談・緊急受診目安。
- 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ. 成人・高齢者の救急要請の目安。
文献・公式情報の確認日:2026年10月8日。旧PDitブログ「パーキンソン病と痛み、どう向き合う?」「その痛み筋力の左右差かも?」をもとに、構成と根拠の説明を改訂しました。
