「まだ普通に歩けるから、リハビリは先でいい?」と迷っている方へ。診断早期から身体を確認する意義、運動研究で分かっていること、自分に合う始め方を紹介します。これからも続けたい生活のために、最初の一歩を一緒に考えましょう。
こんにちは。 PDit(ピディット)の小川順也です。
「まだ普通に歩けるし、仕事もできている。リハビリはもう少し先でいいのかな?」
パーキンソン病と診断されたあと、こんなふうに迷う方もいらっしゃると思います。運動が大切と聞いても、何を、どのくらい、誰に相談して始めればよいのか、分かりにくいですよね。
診断早期から今の身体を確認し、自分に合う運動を考えることには意義があります。 早い時期からの評価と運動の支援を勧める総説もあります。[3]
すぐに大変なトレーニングを始める必要はありません。主治医の治療を続けながら、体調と生活に合う一歩を探していきましょう。
今回は、早期から運動を考えたい理由、研究で分かっていること、そしてPDitで自分に合う運動を見つける流れをご紹介します。
1.「まだ動ける」時期から運動を考えたい3つの理由
今の身体を知り、これからの基準をつくれる
歩く速さや歩幅、姿勢、筋力、バランス。日常生活ができていても、詳しく確認すると変化が見つかる場合があります。
Ellisらの総説では、診断早期にも歩行やバランス、活動量などに変化がみられる研究を紹介しています。だからこそ、診断された頃に身体の状態を評価し、その後も定期的に見直すことを提案しています。[3]
全員に同じ問題があるわけではありません。まず今の得意な動きと、少し苦手な動きを知る。その記録があれば、後から変化を確認するときの手がかりになります。
活動量の低下に気づき、体力を保つ工夫ができる
例えば、外出が少なくなった、歩く距離が短くなった、座る時間が増えた。こうした生活の変化も、運動を考える大切な材料です。
動きにくさには、病気に伴う症状に加え、身体を動かす機会が減ることで生じる体力や筋力の低下が重なる場合があります。早い時期から活動の様子を振り返ることで、生活の中に運動を取り入れる工夫を考えられます。[3]
できていないことを探して責めるための確認ではありません。今できていることを土台に、取り組めることを見つけるための確認です。
生活に合う運動習慣を組み立てられる
運動を生活に入れるには、内容だけでなく、時間や場所、続けやすさも大切です。
仕事の前と後では、どちらが取り組みやすいか。自宅と外では、どちらが自分に合うか。一人で行いたいか、誰かと一緒の方が続けやすいか。
早いうちから相談することは、こうした自分なりの方法を探す機会にもなります。目指したいのは、これからも続けたい生活につながる運動習慣です。
2.研究では、早期のパーキンソン病に対する運動をどう評価している?
診断早期の方が取り組んだトレッドミル運動の研究
Schenkmanらの研究では、診断後5年以内で、研究開始時にはパーキンソン病の薬を使用していない128名を対象に、6か月間の運動を調べました。
高い強度のトレッドミル運動、中程度の強度の運動、通常のケアの3群を比較したところ、高強度の群では、通常のケアの群より運動症状を評価する点数の悪化が小さい結果でした。[1]
ただし、これは安全性や取り組めるかどうか、さらに大きな研究へ進む価値を検討した第2相試験です。この研究だけで、病気そのものの進行を抑えられると確定したわけではありません。
また、運動に関連した筋肉・関節などの有害事象も報告されています。研究の高い強度をそのまま全員に勧めることや、「中程度の運動には意味がない」と受け取ることも適切ではありません。[1]
自宅の運動と遠隔支援を組み合わせた研究
van der Kolkらは、症状が軽く、普段の活動量が少ない130名を、自宅で固定式自転車を使う有酸素運動の群と、ストレッチの群に分けました。両群ともアプリと遠隔支援を受けながら、週3回、1回30〜45分、6か月間取り組みました。
薬の効果が少ない状態で測定した運動症状の点数は、有酸素運動の群で悪化が小さく、群間の差は4.2点でした。[2]
この結果は、自宅でも計画された運動に取り組む意義を示しています。一方、支援の有無を比べた研究ではないため、遠隔支援だけの効果は分かりません。また、PDitのサービスを検証した研究でもありません。
症状への効果と、病気そのものの進行は分けて考える
運動には、身体機能や運動症状を支える役割が期待できます。しかし、症状の点数が良好だったことと、神経の変性そのものを止めたことは、同じ意味ではありません。2024年の総説も、症状に対する効果と、病気の経過を変える可能性を区別しています。[4,6]
今回紹介した2つの試験は、「診断直後から始めた人」と「後から始めた人」が、運動開始後にどう違うかを長期的に確かめたものではありません。[1,2]
その限界を踏まえたうえで、今の身体を知り、必要な運動を始めることを大切にしたいと考えています。
3.どんな運動から始める?4つの要素と、量・強度の考え方
Parkinson’s Foundationと米国スポーツ医学会(ACSM)の運動推奨では、次の4つの領域を取り上げています。[5]
| 運動の要素 | 目的や取り組みの例 |
|---|---|
| 有酸素運動 | 持久力を支える。歩行や固定式自転車など |
| 筋力トレーニング | 立つ、歩く、階段を使うなどの動作を支える力を養う |
| バランス・動作練習 | 姿勢の調整や方向転換などを、状態に合わせて練習する |
| 柔軟性の運動 | 関節を動かしやすくするためのストレッチなど |
ただし、4つを全員が同じ量、同じやり方で行うわけではありません。研究による裏づけの強さも項目ごとに異なり、米国理学療法士協会(APTA)のガイドラインでは、柔軟性の運動の根拠は、有酸素運動や筋力・バランスの運動より限られています。[4]
運動経験、体力、症状、持病、疲れ方、服薬の時間帯などを踏まえて、種類・強度・頻度を調整します。転びやすさや立ちくらみなどがある場合も、主治医やパーキンソン病に詳しい理学療法士に伝え、方法を相談しましょう。[4,5]
上の表や研究の回数は、個人にそのまま当てはめるメニューではありません。「自分に必要な運動を、適切な量で、続けられる形にする」ことが大切です。
4.専門家と身体を確認すると、自分に必要な運動が見えてくる
同じ「歩きにくい」という悩みでも、確認したい点はいくつもあります。歩幅や腕振り、姿勢、立ち上がるときの力、方向転換、普段の活動量などです。
さらに、「どこまで歩きたいか」「どんな場面が気になるか」を聞くことで、練習する内容が具体的になります。旅行先で歩きたい方と、仕事中の移動を楽にしたい方では、生活の中で目指すことも違いますよね。
専門家による評価では、苦手な動きだけでなく、今ある強みも確認します。必要に応じて動画や写真で動きを一緒に見ると、言葉だけでは分かりにくい点を共有する助けになります。
確認して終わりではなく、「何を優先するか」「どの程度の負荷から始めるか」「生活のどこに取り入れるか」まで整理し、その後の状態に合わせて見直していきます。[3]
5.PDitでは、身体の確認から個別の運動・自宅での継続につなげる
PDitが大切にしているのは、自分の身体を知り、自分に必要な運動を身につけ、それを生活の中で続けられるようにすることです。

スタジオでは、パーソナルチェックや個別のトレーニングを通して、次のように運動を考えていきます。
- 希望と生活を伺う:続けたい仕事や趣味、今の悩み、運動経験を確認します。
- 身体と動きを確認する:歩行・姿勢・筋力・柔軟性・バランスなどを確認します。
- 分かりやすく共有する:動画や写真も使いながら、自分の動きと取り組む課題を整理します。
- 個別の運動を考える:身体の状態に合わせてトレーニングや運動量を提案します。
- 自宅での実践につなげる:ホームワークや動画などを活用し、日常でも取り組めるようにします。
「自分のやっている運動でよいのか分からない」という段階から、相談していただいて大丈夫です。来られる頻度や生活環境も含めて、ご自身に合う取り組み方を考えます。オンラインパーソナルという選択肢もあります。
サービスの内容は、PDitスタジオの案内をご覧ください。
6.運動を始める前によくある疑問
毎日歩いています。それでも相談する意味はありますか?
今の習慣を大切にしながら、歩く量や強度、筋力・バランスなどの要素を確認できます。「足りないものを増やす」だけでなく、今できていることを確かめ、必要なところを調整する相談にもなります。
運動が苦手でも始められますか?
得意・不得意も含めて、始め方を考えましょう。最初からたくさんのメニューをそろえなくても大丈夫です。今の状態に合う内容を確認し、取り組みやすい時間や場所から一緒に考えます。
仕事があり、頻繁には通えません。
通う時間だけでなく、自宅でどう取り組むかも大切です。ホームワークの活用やオンラインパーソナルなど、生活に合う方法をご相談ください。
診断から時間がたっています。今からでも相談できますか?
もちろん、現在の状態から相談していただけます。早期からの運動の意義は、「その時期を過ぎたら遅い」という意味ではありません。これまでの経過や今の困りごとを伺い、必要な支援を一緒に考えます。
7.これからも続けたい生活のために、最初の一歩を
例えば、「旅行を楽しみたい」「仕事を続けたい」「家族と買い物に行きたい」。そんな希望を一つ書き出してみてください。
その生活のために、今の身体を知る。 自分に合う運動を見つける。 続け方を一緒に考える。
最初の一歩は、身体と運動について相談することでも構いません。休む日があっても、思うように続かなくても、ご自身を責める必要はありません。方法や支援の受け方を、その都度考えていきましょう。
「診断日から安心して運動を始められる社会」。PDitは、この実現を目指しています。何から始めればよいか迷っている方も、今の運動を見直したい方も、ご相談ください。
運動を習慣にすることや、生活全体の整え方は、こちらの記事「研究から考える運動習慣と生活の整え方」でも紹介しています。
PDit 小川順也
参考文献
- Schenkman M, et al. Effect of High-Intensity Treadmill Exercise on Motor Symptoms in Patients With De Novo Parkinson Disease: A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2018;75(2):219–226. 論文を読む/DOI: 10.1001/jamaneurol.2017.3517
- van der Kolk NM, et al. Effectiveness of home-based and remotely supervised aerobic exercise in Parkinson's disease: a double-blind, randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2019;18(11):998–1008. 論文情報・抄録を読む/DOI: 10.1016/S1474-4422(19)30285-6
- Ellis TD, et al. Evidence for Early and Regular Physical Therapy and Exercise in Parkinson's Disease. Semin Neurol. 2021;41(2):189–205. 論文を読む/DOI: 10.1055/s-0041-1725133
- Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022;102(4):pzab302. ガイドラインを読む/DOI: 10.1093/ptj/pzab302
- Parkinson's Foundation/American College of Sports Medicine. Parkinson's Exercise Recommendations. 運動推奨PDF/2026年2月17日の更新告知
- Langeskov-Christensen M, Franzén E, Hvid LG, Dalgas U. Exercise as medicine in Parkinson's disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2024;95(11):1077–1088. 論文情報・抄録を読む/DOI: 10.1136/jnnp-2023-332974
