日常生活

パーキンソン病と座りすぎ|運動時間だけでなく、日常の活動量を見直そう

運動の時間と、日常の小さな動きを一緒に考える

パーキンソン病と座りすぎ|運動時間だけでなく、日常の活動量を見直そう

運動はしていても、家では座っている時間が長い——そんな方へ。研究を手がかりに、運動以外の身体活動と座りすぎを考えます。自分を責めず、体調に合う小さな動く機会を見つけましょう。

こんにちは。 PDit(ピディット)の小川順也です。

「運動はしているけれど、家にいる時間は座っていることが多い」

パーキンソン病と診断されて運動を意識し始めると、運動の種類や時間に目が向きますよね。もう一つ、一緒に振り返りたいのが、運動をしていない時間をどう過ごしているかです。

散歩やトレーニングに加え、家の中の移動や家事も、身体を動かす機会になります。ただし、「座っていたから病気が進んだ」と自分を責める必要はありません。研究から分かることと、まだ分からないことを分けて、無理のない生活の整え方を考えてみましょう。

1.「運動」と「日常の活動量」は、何が違う?

身体活動とは、エネルギーを使って身体を動かすことです。運動だけでなく、移動や家事など、生活の中の動きも含みます。一方、座位行動は、起きている間に座ったり横になったりして、あまりエネルギーを使わずに過ごすことを指します。[1]

言葉 生活の中の例と考え方
身体活動 散歩、室内の移動、掃除、園芸など。生活全体の「身体を動かすこと」です。
運動 体力や身体機能の維持・向上などを目的に行う、計画的な活動。トレーニングや運動教室などが当てはまります。
座位行動 座ったままテレビを見るなど、起きていても動きが少ない時間。睡眠は含めません。椅子に座って行う運動を、すべて座位行動と扱うわけでもありません。

つまり、運動する時間をつくることと、生活の中の動きを保つことは、両方を考えられます。WHOも、身体活動は生活のさまざまな場面にあり、少しでも取り組むこと、座位時間を減らすことを勧めています。[1]

ただし、これは一般的な健康のための推奨です。パーキンソン病の進行を防ぐ「座ってよい時間」が決まっている、という意味ではありません。

2.研究から分かること、まだ言い切れないこと

活動量は人によって大きく違う

Dontjeらは、自分で「活動が少ない」と感じているパーキンソン病の方を対象に、加速度計で日常の活動を調べました。解析対象となった467人では、活動の程度に大きな個人差がありました。[2]

ここで大切なのは、もともと活動が少ない方を集めた研究だという点です。結果をそのまま、パーキンソン病の方全員の生活に当てはめることはできません。

また、この研究の「座位から軽い活動まで」という区分は、「ずっと座っていた時間」と同じではありません。数字だけで活動不足を決めつけず、ご自身の一日を確認することが出発点になります。

続けて活動していることと、身体機能の経過には関連がある

Tsukitaらは、早期のパーキンソン病の方237人を、中央値で5年間追跡したデータを解析しました。追跡中の平均的な身体活動量が多いことは、姿勢・歩行の安定性や日常生活機能などの低下が緩やかであることと関連していました。[3]

ただし、これは活動量を割り付けた実験ではなく、生活を観察した研究です。「身体の状態が保たれていたから活動を続けられた」という逆の関係や、ほかの要因の影響も残ります。座る時間を減らせば病気そのものの進行を抑えられる、と証明した研究ではありません。

「もっと動こう」という支援だけでは、結果は一様ではない

活動の少ない方586人を対象としたParkFit試験では、活動を増やすための個別支援と、比較対象の理学療法を2年間調べました。主な評価に使った質問票では、全体の身体活動量に明確な群間差は認められませんでした。一方、活動日誌や活動量計など、一部の別の指標では差がみられました。[4]

これは、「声をかければ誰でも活動量が増える」と単純には考えられないことを示しています。何を増やすのか、どう続けるのか、何で確認するのかまで、自分に合う方法を探す必要があります。

研究を生活に取り入れるなら、目指したいのは「進行を防ぐために動き続ける」ことではなく、大切にしたい生活のために、安全に動ける機会を整えることです。

3.一日の中に、小さな「動く機会」をつくる

いきなり運動を増やす前に、今の生活のどこなら無理なく動けそうかを考えてみましょう。

運動の時間、日常の用事、座り続ける合間の動き、必要な休息を組み合わせる生活の概念図

図:生活を組み立てるための一例です。研究で効果が確認された一律の時間割や運動処方ではありません。身体活動・行動計画・安全性の考え方を参考に、PDitが作成しました。[1,5,6]

生活の場面 取り入れ方の例と、安全のための工夫
テレビや読書の合間 区切りのよいところで姿勢を変える。安全に立てる方は、一度立ってみることから。めまいがあるときは無理に立ちません。
家の中の用事 植物の手入れや片づけなど、やりたい用事を一つ選ぶ。足元を片づけ、重い物や熱い飲み物を持って歩く場面は避けます。
外出する日 体調と歩きやすさに合う道を選ぶ。距離や速さを一律に増やさず、休める場所や付き添いの必要性も考えます。
立つ・歩くことが難しい日 安定した椅子でできる、自分に合った動きを相談する。立つことだけを目標にせず、痛みや疲れに合わせます。

どれも、生活に取り入れやすい場面を探すための例です。「必ず30分ごとに立つ」「毎日決まった歩数を達成する」といった共通のノルマではありません。

ゆっくりの散歩や短い家事も、身体活動の一つです。ただし、軽い活動だけで筋力や持久力のための運動をすべて置き換えられるわけではありません。運動の内容と日常の動きを、組み合わせて考えましょう。[1,6]

4.まずは「できた量」より、一日の流れを知ろう

運動の目標を決める前に、例えば2〜3日だけ、次の3点を簡単にメモしてみる方法があります。

この日数は記録を始めるための例で、病気の進行を判定する検査ではありません。細かく測り続ける必要もありません。

記録から「午後は疲れやすい」「午前中なら用事を済ませやすい」と分かれば、相談が具体的になります。最初の目標は「読書の合間に一度、姿勢を変える」など一つで十分です。

理学療法の行動支援では、本人に合う目標を決め、行動を計画し、実行して振り返る考え方が使われています。[5] できなかった日は意志の弱さを責めず、体調や環境、目標の大きさを見直しましょう。

5.休息も大切。こんなときは先に相談を

活動量を増やすために、必要な休息や睡眠を削る必要はありません。疲れが強い日や動きにくい日には、内容を調整してください。

特に、立ち上がるとふらつく、転びそうになる、痛みが出る、運動後の疲れが強く残る場合は、無理に活動を増やさず主治医や理学療法士に相談しましょう。

パーキンソン病の運動推奨でも、低血圧やすくみ足などの安全面、必要な見守り、専門の理学療法士による評価が重視されています。薬を使っている方は、動きやすい時間帯も相談の材料にしてください。[6]

「もっと動く」だけでなく、「何が動きにくさを生んでいるか」を一緒に整理することが大切です。

6.PDitで、自分の生活に合う運動を考える

「運動は始めたいけれど、何が自分に合うのか分からない」 「運動教室の時間以外も、もう少し身体を動かしたい」

そんな方は、運動のメニューだけでなく、一日の過ごし方や続けたい生活も一緒に相談してください。

PDitでは、パーキンソン病の方に向けたスタジオでの支援とオンライントレーニングをご案内しています。ご自身の状態や通いやすさ、必要な支援に合う方法を探していきましょう。

PDitスタジオ・オンライントレーニングの案内を見る

今日は、ご自身の一日の中で「ここなら無理なく動けそう」と思う場面を一つ探してみてください。小さく始め、体調に合わせて見直していく。その積み重ねを支えていきたいと思います。

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参考文献・資料

  1. World Health Organization. Physical activity. 身体活動・座位行動の定義と、一般的な推奨。
  2. Dontje ML, et al. Quantifying daily physical activity and determinants in sedentary patients with Parkinson's disease. Parkinsonism Relat Disord. 2013;19(10):878–882. doi:10.1016/j.parkreldis.2013.05.014.
  3. Tsukita K, Sakamaki-Tsukita H, Takahashi R. Long-term Effect of Regular Physical Activity and Exercise Habits in Patients With Early Parkinson Disease. Neurology. 2022;98(8):e859–e871. doi:10.1212/WNL.0000000000013218.
  4. van Nimwegen M, et al. Promotion of physical activity and fitness in sedentary patients with Parkinson’s disease: randomised controlled trial. BMJ. 2013;346:f576. doi:10.1136/bmj.f576.
  5. Academy of Neurologic Physical Therapy. Behavior Change Approach:パーキンソン病理学療法ガイドラインに基づく資料. 2022年作成のFact Sheetを参照。
  6. Parkinson’s Foundation. Parkinson’s Exercise Recommendations. 運動の組み合わせ、個別評価、安全性に関する推奨。
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小川 順也
この記事の執筆者
小川 順也
株式会社Smile Space 代表取締役 / 理学療法士 / LSVT BIG 認定資格者
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