姿勢・歩行

パーキンソン病で片腕が振りにくいのはなぜ?歩行の左右差とリハビリの考え方

左右差だけで判断せず、全身の動きと歩きやすさを確認する

パーキンソン病で片腕が振りにくいのはなぜ?歩行の左右差とリハビリの考え方

歩くとき、片方の腕が振りにくいと気になっていませんか。研究を手がかりに左右差の意味を整理し、全身の歩きやすさを確かめる視点と、自分に合うリハビリを相談するための準備を紹介します。

こんにちは。PDit(ピディット)の小川順也です。

歩くときに「片方の腕だけ振りにくい」「左右で動きが違う」と感じることはありませんか。

パーキンソン病では、腕振りが小さくなったり、左右差が目立ったりすることがあります。ただし、腕の振り方だけで病気の状態や進行を判断することはできません。 腕・体幹・脚の動きと、実際の歩きやすさを一緒に確かめることが大切です。[1–4]

この記事では、研究で分かっていることを整理し、無理に腕を振る前に確認したいポイントと、リハビリの相談につながる準備を紹介します。

1. 片腕が振りにくいのは、気合いや筋力だけの問題ではありません

歩いているとき、普段は腕の動きを一回ずつ考えていません。パーキンソン病では、こうした自動的な動きが小さくなったり遅くなったりする「動作緩慢」や、身体のこわばりである「筋強剛」がみられます。腕振りの減少も運動症状の一つです。[1]

症状の現れ方は一人ひとり異なり、左右でも違います。「もっと頑張って振ればよい」と自分を責める必要はありません。

一方で、肩の痛みや関節の動かしにくさなど、パーキンソン病以外の問題が重なることもあります。[4] 振りにくさに痛みを伴うときは、そのことも相談してください。

まだ診断を受けていない方も、片腕が振れないという一点から自己判断せず、気になる変化を医療機関で伝えましょう。

2. 研究では「腕振りの左右差」がどう調べられている?

診断早期にも左右差がみられます

Lewekらの研究では、早期のパーキンソン病の方12名と、病気のない方8名の歩行を測定しました。パーキンソン病の方は、服薬の効果が切れた状態で評価されています。歩く速さに明確な群間差がなくても、腕振りの左右差はパーキンソン病の群で大きいという結果でした。[2]

これは「足だけでは気づきにくい変化を、腕の動きからも捉えられる可能性」を示す小規模な研究です。腕振りだけで診断できることや、左右差を直せば病気の進行を抑えられることを証明した研究ではありません。

2023年の系統的レビューでは、14研究・計1,130名をまとめ、パーキンソン病の方は比較対象より腕振りの左右差が大きい傾向を報告しました。ただし、主にある時点の状態を比べた観察研究であり、測定方法や対象者には違いがあります。[3]

左右がそろったことだけを「改善」と考えない

このレビューでは、罹病期間や運動症状の程度が大きい研究集団ほど、左右差が小さいという関連もみられました。[3]

ここで大切なのは、「左右差が小さい=よく動ける」とは限らないことです。例えば、両腕とも動きが小さければ、左右の差は目立たなくなります。逆に、片腕が振りにくくても、生活の中で安全に歩けている方もいます。

この結果から一人の将来の経過を予測することはできません。見るべきなのは左右差だけでなく、腕の動きの大きさ、歩幅、安定性、そして本人の歩きやすさです。

3. 腕・体幹・脚を、一つの歩行として考えましょう

腕の動きだけを切り離して考えると、歩行全体の困りごとを見落としがちです。研究でも、腕振りとともに体幹の動きや歩幅が測定されています。[5]

次の図は、歩き方を相談するときに整理したい視点をまとめたものです。決まった角度や大きさにそろえるための運動メニューではありません。

歩行は腕・体幹・脚の連動として確認する。腕振りの左右差や痛み、体幹の向きやこわばり、歩幅や足の出やすさを、安定性と本人の歩きやすさに結びつけて相談する概念図。

図:文献[4–6]を参考に、相談の視点としてPDitが作成した概念図。研究の測定値や効果量を示す図ではありません。

例えば、「腕を振ることに集中すると足が出にくくなる」「肩が痛くて後ろへ動かしづらい」「曲がるときに不安がある」では、相談したい内容が違います。

目標は、見た目の左右差をそろえることだけではなく、必要な場所へ安全に、歩きやすく移動できること。 通院、買い物、散歩など、自分が続けたい場面を思い浮かべてみてください。

4. 腕を意識して振る練習は、役に立つ?

その場で動きが変わる可能性と、長期的な効果を分けて考える

Mainkaらは、補助具なしで安全に歩けるパーキンソン病の方30名を対象に、普段どおりの歩行、腕振りを意識する歩行、腕の動きを音楽に反映する機器を使った歩行を比較しました。腕を意識する条件で腕振りが大きくなり、音楽によるフィードバックでさらに変化がみられました。[5]

ただし、同じ日に固定された順序で条件を変えた研究です。長期の追跡はなく、重い歩行障害やすくみ足などを持つ方への適用にも限界があります。「全員が大きく腕を振れば安全になる」「音楽を聴くだけで同じ効果が出る」という意味ではありません。

まずは、自分に合う手がかりを確認する

米国理学療法士協会(APTA)のガイドラインは、歩行練習や、音・目印などの手がかりを使う方法を推奨しています。一方、全員に共通する最適な方法や量が決まっているわけではありません。[6]

そのため、腕の動きを意識する方法を試す場合も、歩幅やふらつき、疲れ方がどう変わるかまで、理学療法士と一緒に確認しましょう。いくつもの指示を同時に頑張る必要はありません。

重りを持って歩くことも、この記事では共通の自主練習として勧めません。負荷や練習方法は、肩の状態と歩行の安全性を評価したうえで選ぶものです。

薬の効く時間との関係も相談材料になります

2025年の研究では、パーキンソン病の方40名と病気のない方20名を評価し、そのうち継続して薬物治療を受けている20名では、L-ドパのOFF・ON条件を比較しました。ON条件で腕の動きの範囲や速さなどが改善する結果が得られています。[4]

研究での服薬条件は医療者が管理したもので、自宅で再現するための指示ではありません。薬の量や時間を自分で変えず、「いつ振りにくいか」「服薬前後でどう違うか」を主治医に伝えてください。

5. 今日できるのは、困る場面を一つメモすること

診察や運動相談の前に、次の項目から気になるものを一つ選んでおくと、困りごとを具体的に伝えやすくなります。無理に歩いて確かめたり、毎日左右差を採点したりする必要はありません。

確かめたいこと 相談時に伝える例
いつ・どちらが気になる? 「朝は右腕が振りにくい」「最近、左肩に痛みもある」など、気づいた時期と左右をメモする。
どんな場面で困る? 家の中、屋外、曲がるときなど。つまずき、すくみ、ふらつきの有無も伝える。
腕を意識するとどうなる? 普段の経験の中で、歩きやすい、変わらない、足に注意を向けにくい、などを伝える。無理な再現はしない。
何を続けたい? 「駅まで安心して歩きたい」「家族との散歩を続けたい」など、生活の目標を一つ選ぶ。

表の言葉は、伝え方の例です。実際の患者さんの体験談ではありません。

転びそうになることが増えた、肩の痛みが続く、歩くことが怖くなった場合は、自己流の練習を増やす前に、主治医やパーキンソン病に詳しい理学療法士へ相談しましょう。

6. 気になり始めたときから、自分に合う運動を相談できます

「まだ歩けるから、リハビリの相談は早いのでは」と遠慮する必要はありません。APTAのガイドラインでも、診断後の早い時期から歩行練習を考えることが示されています。[6]

まずは、「どちらの腕が振りにくいか」だけでなく、「どんな場面を楽にしたいか」を話すところから始めましょう。

PDitのスタジオやオンライントレーニングを検討されている方は、下記のサイトからサービス内容をご確認ください。相談時には、歩くときの困りごと、痛みやふらつき、ご自身が続けたい活動をお伝えいただけると、一緒に考える出発点になります。

PDitのスタジオ・オンライントレーニングを見て、相談する

この記事で紹介した研究は、PDitの特定のメニューの効果や、病気の進行を抑える効果を保証するものではありません。今の状態を理解し、自分に合った取り組みを選ぶための情報としてお役立てください。

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参考文献

  1. Parkinson's Foundation. Movement Symptoms. 運動症状の公式解説。参照日:2026年9月29日。
  2. Lewek MD, et al. Arm swing magnitude and asymmetry during gait in the early stages of Parkinson's disease. Gait Posture. 2010;31(2):256–260. doi:10.1016/j.gaitpost.2009.10.013.
  3. Espinoza-Araneda J, et al. Arm swing asymmetry in people with Parkinson's disease and its relationship with gait: A systematic review and meta-analysis. Braz J Phys Ther. 2023;27(6):100559. doi:10.1016/j.bjpt.2023.100559.
  4. Patera M, et al. Abnormal arm swing movements in Parkinson’s disease: onset, progression and response to L-Dopa. J Neuroeng Rehabil. 2025;22:47. doi:10.1186/s12984-025-01589-w.
  5. Mainka S, et al. The Power of Musification: Sensor-Based Music Feedback Improves Arm Swing in Parkinson's Disease. Mov Disord Clin Pract. 2021;8(8):1240–1247. doi:10.1002/mdc3.13352.
  6. Osborne JA, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022;102(4):pzab302. doi:10.1093/ptj/pzab302.
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小川 順也
この記事の執筆者
小川 順也
株式会社Smile Space 代表取締役 / 理学療法士 / LSVT BIG 認定資格者
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