パーキンソン病とは、脳の中のドパミン神経細胞が減っていく進行性の神経疾患です。その結果、体の動きのスムーズさが失われ、歩行や姿勢、日常の動作に影響が出てきます。完治する治療法はまだ存在しませんが、症状の進行を抑え、日常生活の質を保つためのさまざまな治療法と生活上の工夫があります。今日の記事では、治療法の全体像と、PDitスタジオでの支援・研究の視点も交えてご紹介します。
① 薬物療法(基本の治療)
薬物療法は、現在最も一般的で中心となる治療です。脳内で不足したドパミンを補う、またはその働きを助ける薬を使って、運動症状を改善します。
- L‑ドパ(レボドパ):ドパミンの元となる薬
- ドパミン作動薬:ドパミン受容体を刺激
- MAO‑B阻害薬 / COMT阻害薬:ドパミンの分解を防ぐ
症状や生活スタイルに合わせてこれらを組み合わせて使います。副作用や効き方の波(ウェアリングオフ)を抑える工夫も含め、主治医と調整しながら進めることが大切です。この薬以外にも様々な薬があります。種類が多いので先生としっかりとお話ししましょう。
② 手術療法とデバイス補助療法(選択肢の広がり)
薬だけでは十分にコントロールできなくなった場合、デバイス補助療法(DAT)が選択肢になります。その代表例が以下のものです。
- DBS(脳深部刺激療法):脳に電極を入れて電気刺激で症状を和らげる治療
- 熱凝固療法:脳の一部分を熱で焼き切る手術方法。主に振戦が強い方に推奨
- 持続的投与療法:薬をポンプで持続的に投与して薬効を安定させる方法(皮下注・経腸)
DBSは薬で改善しにくい症状の波を整え、生活の質を改善する力があります。どちらも専門医との綿密な検討が必要です。
③ 運動療法(毎日の行動が治療に)
薬と並んで重要なのが運動療法です。体を動かすことは単なる筋力維持だけでなく、脳の可塑性を促し、姿勢・歩行・バランスの改善につながります。
PDitでは、パーキンソン病に特化した運動プログラムをスタジオとオンラインの両面で提供しており、以下の点を重視しています。
✔ その人の「動きの特徴」に合わせたプログラム
✔ ホームワーク専用の運動動画で運動の定着化
✔ 自主トレの定着化を支える言葉かけと動機づけ
また、歩行データから運動特徴やサブタイプ分類をセンシング可能かという研究も進めています。これにより、より個別性の高い運動療法の実装を目指しています。
(PDit × 順天堂大学保健医療学部 松田教授 共同研究)
④ 食事療法(身体の土台を整える)
パーキンソン病では、腸と脳のつながりが注目されています。※詳細なメカニズムはまだ研究段階ですが、腸内環境が体調全般に影響する可能性が高いと考えられています。
- 便秘対策の食物繊維と水分
- 薬の吸収を考えたたんぱく質とのタイミング
- 栄養バランスの良い食事
こうした工夫が、日常の調子を安定させる助けになります。また、パーキンソン病では固縮や振戦などが強い場合は基礎的な代謝が高くなっているので痩せやすいです。なので、カロリーも意識した食事が重要です。
⑤ 睡眠・ストレス・日常生活の工夫
パーキンソン病は体の動きだけでなく、非運動症状(便秘・睡眠障害・気分の低下など)も多く見られます。そのため、日常生活全体を整えることが治療に直結します。
- 十分な睡眠を確保すること(脳の回復時間)
- ストレスをためない生活
- 日光を浴びる・適度な活動をすること
- 人とのつながりを保つこと
PDitでは、運動だけでなく、こうした生活の質全体を整えることにも力を入れています。たとえば、生活リズムや歩行・姿勢の変化を一緒に振り返ることで、薬が効く時間帯や調子の良い1日の過ごし方を見つけるサポートにつなげています。また、PDitオンラインでは会員さん向けに代表の小川がこれらのことに対してライブ配信を通して発信を行なっています。
一緒に進んでいく未来へ
パーキンソン病は進行性ではありますが、治療の選択肢が増え、生活全体でコントロールできる時代になっています。薬物療法・手術療法・運動療法・食事・生活習慣…どれも単独ではなく、組み合わせて取り組むことが大切です。
PDitは、研究・現場・支援を通じて、診断早期から適切な運動療法が当たり前に受けられる社会を目指しています。今後も、工学・医療・リハビリの専門家と連携し、より多くの方の生活を支える取り組みを進めていきます。